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光あれ -Hello oneday- 

『Hello oneday』

物語の簡単な説明。
何かが欠けた人々が集まるという世界の何処かにある街『灰の街』。
そこで生きる人々のちょっとした物語。

第1章は緩いお話でも。

主人公の名前は『枯乃沢 邑 -Yuu Konosawa-』
左目を実の父にくり取られた少女です。

『Hello oneday -光あれ-』
story.01 『灰の街 -oneday-』

 私は、その瞬間を今でも忘れる事が出来ない・・・・・・。

 首を締め付け、身体を戒める首輪よりも恐ろしいその鋼。
 家の中を照らす、唯一の灯りである蝋燭よりも光り輝くその刃。
 私の瞳の上をスッとなぞるようにそれは突き出され、そして私の視線から消え去っていった。
 次の瞬間、左側の景色が完全に消え去った。

「何故だ・・・何故避けなかったんだ・・・雪」
(明人さん・・・私は雪さんじゃないよ?)
「君の目は!そんなに紅くないだろぅ!?何故なんだい!?どうしてなんだい!?何で!何で君は僕の前から!!!」
(だって、明人さん・・・私は・・・)
「違う!君は雪だ!けっして“ ”なんかではない!君は!!!」

 振り下ろされた刃は、とっても的確に私の胸を貫いたと思う。
 身体は痛みを訴えたけど、閉鎖した心はちっとも痛くなかった。
 第一にして、私は“ニンゲン”じゃないから。
 雪さんが消えてしまったあの日から、私は“ ”じゃなくて“雪”になってしまった。それと同時に、もう“ニンゲン”でも無くなってしまった。
 その時の私は、目の前でガタガタ震えてる“明人さん”の“雪”って名前の“ニンギョウ”だったんだ。

                  ***

 気が付けば、眠りについていた。
 怠い身体に檄を入れて立ち上がると、すっかり体育座りに慣れてしまった身体がギシギシと悲鳴をあげた。
 クウクウとお腹が鳴るので辺りを見回したが、あるのは即席麺の捨て殻だけだった。
「あ・・・何も食べる物がないや・・・・・・」
 食料が無いのは、保護者の居ない私にとっては即死に繋がってしまいう。それを防ぐには、最低限食べる事が必要不可欠というわけだ。
「えっと、財布財布・・・・・・」
 ゴミの中に手を突っ込んで財布を探してみる。しばらくして、私の手の中には何の変哲もない巾着袋が納められていた。
「それじゃ、コンビニにでも行きますか・・・・・・」
 着の身着のままの恰好で表に出ると、黒い太陽とドンヨリと沈んだ雲が私を迎えてくれた。
「雨が降りそうだよ・・・ホント、外は億劫だね・・・」
 フラフラとアパートの階段を降りていくと、相変わらずぼんやりとしたお爺さんが庭先を箒で掃いていた。
 コンビニまで歩いて10分のアパートで良かったなって思える今日この頃。
 ここに収容されて3ヶ月。やっとこの街の住人らしくなれてきた気がする。

                  ***

 この“灰の街”は、世界の何処かに作られた隔離都市だ。
 この街に集められた人々は、現代の化学や医学では解明できない症状を発症してしまった人々で、この街はそんな彼等を隔離し、観察する為の研究機関と言うわけなのだ。
 その為、一見無法地帯と化しているかのような此処は、以外や以外にきちんとした警察組織や軍隊なども用意されており、その治安はどの超大国と比べてもひけをとらない。
 ここで暮らす人々も、法と治安さえ守れば自身の思うがままに暮らせるのである。
 その気になれば、仕事先もあるし一端に娯楽施設も用意されている。中央広場には室内プール場や、図書館。果てはゲームセンターやショッピングモールまで設置されているのだから驚きを隠せない。
 まぁ、仕事と言っても最低限暮らす為のお金は毎月何処からか銀行に入金されるのでまったく問題はないのだが・・・・・・。
 最近では、精神異常者を語ってこの街にやって来ようとする人も少なくはないようで、外の世界がどれだけ辛いのかが良く分かる。多分、地上の楽園というのは此処の事なのかもしれない。
 ・・・・・・多分間違ってると思うけど。
「あ、お金がないや」
 折角コンビニまで来たって言うのに、巾着袋には15円しか入っていなかった。それじゃ10円ガム程度しか買えないので、腹は膨らませられない。仕方がないので、私はここから10分程歩いた場所にある銀行に向かう事にした。

                  ***

 銀行の窓口は苦手なので、ATMに並んでお金を引き落とす。貯金残高は3万円。月に7万円支給されるので、既に半分近くのお金を使ってしまっている。
 まだ今月は1週目だというのに・・・・・・。
「仕方がない・・・飛鳥さんの所に行きますか・・・・・・」
 カップ麺生活って結構大変である。3食同じカップ麺だと飽きてくる上に、栄養バランスも悪い。
 一応女の子なので見てくれは考えなくちゃいけない。見てくれの悪い女の子じゃ、仕事も出来ないし。
 結局、カップ麺にサプリメントを併せて買っているせいで、余計な出費がかさんでしまうのだ。
 まぁ、私の副業は上手く行けば1日に1万円は稼げるので、特に問題は無いのだが・・・。
「疲れるんだよね・・・・・・お客さん次第だよ・・・ホント・・・」
 中央広場から南側に下りていくと、そこには懐かしい純和風建築の建物が建ち並んでいる。そこが私の副業の場所だった。
 俗に、遊郭と呼ばれる職業。
 男の性が思うがままに好き放題されてお金を貰う仕事。汚れた商売とののしられる運命にある、でもその発端は結構神聖だったりする職業。表向きは法で禁じられているものの、軍隊や警察の人間は私とは違う普通の人間だ。欲求不満は士気に関わるので、仕方がなく見て見ぬ振りをされている。
 私はその遊郭街の中でも1,2を争う人気店『蓮華』で、日雇いのバイトをしている。
 どんなプレイでもこなすからか、人気はそこそこ。胸がぺったんこだから巨乳好きには指名されないくらいが欠点なので、店主で遊郭頭の飛鳥さんには本格的に働かないかと持ちかけられている。
 まぁ、個人的には自分の出たい時にでれる日雇いの身が楽で良いのだが・・・・・・。
 そうこうしているうちに、店の裏口まで来ていた。
 飛鳥さんに挨拶をして、湯を浴びてから着物に着替える。
 今日も客の入りは上々。
 順調にいけば私にも指名が来る頃合いになってきた。
 番台の呼ぶ声にひかれて向かうと、そこには一人の青年が居た。
 遊郭だってのに軍服を着込んでいるあたり新参者なんだろうその青年は、「宜しくお願いします」なんて照れながら頭を下げた。
 堅い軍服があわない可愛い顔の青年が笑う。
 何だか新鮮な感じがして、私の顔からも笑みが零れた・・・。
 それが、私と一馬の最初の出会いだった・・・・・・。


                                      story.01 『灰の街 -oneday-』
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